bespoke shoemaker(お客様の足型に合わせてフルオーダーで靴を制作)のSAITO様
からバックルを制作して欲しい、とのオーダーを受けました。
いつもと変わらずに臨みたいところですが、自身の手を使い靴を制作されている方からのオーダー、
モノ造りをされている方からのオーダーならば、今まで培って来た技術や知識、コダワリと情熱を
詰め込んでやっていこう、ということで地金を吹くところからスタートです。
指示書をしっかり確認しながら。
ブレスバングルで曲げて、ざっくり表面を整えて。
アウトラインはほどほどに、まずは内寸をしっかり出す。
作業を進める際には何が大事なポイントなのかを見極めて行く必要がありますね。
外側ザックリ、内寸は地道にヤスリで形状を整えていきます。
センター確認し、ここで一度直接打ち合せを実施。
やはり緊張します、初回原型確認は。
2時間に渡る打ち合せの結果、横尺を短くすることと形状を柔らかくとの指示が出ました。
指示書から少し離れていくことになりましたが直接お会いして話し合うことでもっと良いものを、
となっていくんですね。
糸ノコでカットしてロウ付を。
気をつけるのは左右対称で全体の曲り具合を自然な状態に戻しながら修正すること。
ロウ付終了、左右対称OK。
全体形状を「柔らかく」というのが難しくてやりがいがあるところ。
それって感覚的なもので、お客様がどんな雰囲気を求めているのか話を聞きながら決めていきます。
こちらはバックルピンの制作。
上段がとりあえず曲げてみたもの。
全体形状と雰囲気にあうように再度制作したものが下段。
コダワリは全てのパーツに行き渡らせなきゃバランスが悪くなります。
甲丸線自体も線引き板(甲丸)を使用して制作。
センターピンにも加工を。
バックルピンが左右に動かないようホールドさせるために溝を切ってそこに丸環をはめる。
このセンターピン(丸線+丸環)がかなりの難産。
線径を変えて、溝の切り方を工夫し、使用する線の硬さを変えたりみたりでたくさんの試作を。
全体形状を「柔らかく」整えてセンターピン、バックルピンの仮組。
まだセンターピンのベストはみつからないまま、、、
2度目の原型チェックを実施。
今回も2時間に渡る打ち合せを実施。
全体形状OK。
バックルピンは横ぶれしないようにロックされつつ、バックルにくぼみを作ってそこにキッチリと
納まるようにしていきます。
顕微鏡で、リューターを使い、センターを外さないように、削りすぎないように。
リューターが暴れてガリガリリリッってならないように。
あれはスゲー怖いですね(笑)
無事にくぼみを彫り終えました。
センターピンに丸環をキレイにセットする方法も思いつきロウ付済み。
原型の最終作業はバックル本体とセンターピンパーツのロウ付。
0.2mmズレたら台無しレベル、慎重に作業に臨みます。
そんなこんなで原型2パーツが完成しました。
この先量産に入っていくのですが原型を磨きすぎてだらしなくするのが一番のNG。
形状優先の為にサラリと仕上げて、縮みを少しでも減らすために液ゴム型を。
仕上げはゴム目が残らないように細部までチェックしながら(特にバックル中側面)
別々に磨いて、パーツ組み込んで再度仕上げ。
SAITO様のコダワリが詰まった美しいバックルの完成です。
最後に。
今回のような左右対称でズレることが許されないパーツはきっとCADでデータを作ることが出来れば
完璧に制作できるはず。
私は以前少々勉強したCADをうまく理解出来ずにのめり込むことが出来ませんでした。
ジュエリー制作について心のどこかでCOM否定的だったのかもしれないし、絶対覚えなきゃならないという
危機感もない状況だったのですね。
どちらにせよ今出来ることと今までに積み重ねて来たものでお客様に喜んでもらえるように
今後も努力を続けていかないといけません。
何よりもカタチが出来上がっていくことで誰かに喜んで貰えることは幸せな事です。
今回も多発した作業中にうまくいかないこと、それを克服すべく考察や工夫をして成長していけることを
実感出来ました。
SAITO様、この度のオーダー本当にありがとうございました。
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